本記事の内容
- リハビリの最終目標がトイレ自立になるのには訳がある。
- それは患者本人と家族が一番困るから・・・
なぜトイレ動作なのか?
体が衰え、脳梗塞や骨折などの病気になると自分で身の回りのことができなくなります。
必然的にベッドに横になり、オムツで過ごすことになります。最近のオムツは通気性に優れて蒸れも少ないのですが、普通の下着(パンツ)に比べると圧倒的に不快です。尿もれしないために肌に密着していますし、尿や便は常に自分の肌に当たっています。
汚れたらすぐに取り替えて清潔にしてくれたらいいのですが、長い間放置されると不快度は上がります。
また、自分でトイレに行けないのは予想以上に辛いことだからです。
尿や便が漏れそうなのに「もう少し我慢してね」と言われるのは非常に辛い。我慢して漏れてしまったら、「おもらしをしてしまった」と自分自身を責めてしまう人も少なくありません。「だったら自分でトイレに行きたい」と考えるのは普通のことです。
患者さん目線からみると、自分の排泄物を管理・処分されることに抵抗を感じる人も少なくありません。「赤ちゃんみたいにオムツを代えられたくない」と感じるのです。
家族目線では、「オムツの代え方が分からない」「そもそもおむつ交換したくない」「失敗して、洋服や布団が汚れたら困る」というのは本音ではないでしょうか?
トイレで排泄できればすべて解決します。失禁さえしなければ普通のパンツで清潔に過ごせます。行きたいときにトイレに行けて誰の手もかけない。尊厳を維持できるのです。
どのようにすればトイレ自立するか?
トイレ動作は大きく3つに分けられます。
トイレまで行く
ズボンを下ろして便座に座り排泄
おしりを拭いてズボンを上げる
①トイレまで行く
前提として「尿意と便意がわかること」「トイレに行くまでに我慢できること」が最低条件です。
尿意を感じながらもスムーズにトイレまで移動することが必須なのです。
1つ目の解決法は、物理的にトイレを近くするものです。

日頃からベッドで横になることが多いのなら、ベッド脇にポータブルトイレを備え付けてると良いでしょう。必要最小限の動きで排泄が完了するため、尿意や便意を感じてすぐに対応出来るのがメリットです。
メリット
・尿意や便意を感じたらすぐに排泄できる。(我慢しなくていい)
・歩行が不安定でも立ち上がりができればOK
・日中でも夜間でも使える。
デメリット
・排泄物の匂いや処分が必要
・ウォッシュレットが使えない
2つ目の解決法は、トイレの時間を決めること。

尿便意が分からないと尿便失禁のリスクが上がることがわかっています。尿意を感じても我慢することが出来ずトイレに行く間に失禁してしまったり、失禁してしまったことも分からないことのあるのです。
1日の生活リズムの中でどのタイミングでトイレに行くのか?というのは重要です。
一般的に朝起きた直後・昼食の前後・夜寝る前にはトイレに行く習慣をつけます。夜間帯はオムツや尿取りパットを使用すると睡眠時間を確保できます。
②ズボンを下ろして便座に座り排泄する。
以外かもしれませんが、座ってズボンを下ろすことは難しいのです。
ズボンはお尻をすっぽり包んでいるので、座ったままではどんなに頑張っても脱がせることが出来ません。前のめりになって、お尻を浮かせる必要があります。
立ち上がりが難しい人では、立ち上がるのをサポートする人とズボンを下ろす人の2人が必要になります。これを2人介助といいます。
自分で立ち上がりが出来る→介助者1人(ズボンを下ろす介助)でトイレ動作が可能。
自分で立ち上がり出来ない→介助者2人(立ち上がりの介助とズボンを下ろす介助)が必要。
リハビリでは立ち上がりと立位姿勢の練習を行う必要があります。
③後始末をする。
後始末のチェックポイント
・残便や残尿はないか?
・お尻を綺麗に拭けているか?
・パンツやズボンは汚れておらず、きちんと履けているか?
尿取りパットを併用している場合は、パットがよれておらずきちんと当たっているかを確認します。臀部付近はズボンがきっちり上がっているかを確認し、衣服の巻き込みを防止しましょう。
トイレ動作自立すればリハビリゴールになるのか?
トイレ動作は運動機能と認知機能と判断力が必要とされます。健常者はなんの苦痛もなく行えます。運動機能が落ちて立位が取れなくなったり、認知症になって判断力や認知機能が低下すると当たり前にできません。
患者さんのレベルに合わせてリハビリの目標を設定するのですが、とりあえずの目標としてトイレ動作を挙げる場合は多いと思います。
患者さんや家族さんが困ることの1位がトイレ動作なのです。
トイレ動作をしっかり練習することで他の作業(整容や更衣)にも応用が効きますし、目標を達成することで自身がつくでしょう。

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