本記事の内容
- 歩行は全身運動である。
- 作業全体で評価すると歩行評価は不可欠

作業療法士に歩行分析が必要なわけ
作業療法士は手のリハビリの専門家であると思われています。肩の骨折や指の変形の部分的なリハビリも大事です。ですが、作業全体で見たときに下肢の運動は作業の土台となる部分を忘れてはいけませんよね?
- 動的な立位バランス
- 上肢と下肢の連動
歩行は単に移動することだけが目的ではない事が多いのです。
歩行には、歩く、走る、運ぶ、乗り越える、連れて行くなど様々な理由をもちます。
というように、持って歩くことが必要になります。
リハビリでは歩くこと【トイレに行く・デイサービスに行く・リビングに行く】というほんとうに最小限の動きのみを練習します。
病気になって歩くことだけできても、生活できないのは物を持って歩くことができないからです。
物を持って歩くにはどうすればよいか?
実際に物を持って歩くにはどうすればよいか?を考えてみます。
まず、何を持ち歩く必要があるかを評価します。
コップ・スマホ・リモコン・財布・かばんなど
小さくて軽いものは持ち運びが簡単で、大きくて重たいものは難しいです。
軽いものから初めて徐々に重たいものへ変えて行きます。バランスを崩して持っているものを落としたり、転倒してしまっては元も子もないです。
歩行分析をしよう
物を持って歩くには自分の体をコントールしなければいけません。転けそうになったときにバランスを立て直す筋力とバランス感覚が必要なのです。
最初の話に繋がりますが、歩行【下肢と体幹】の評価が必要になるわけです。
右手にものを持って独歩するには、右側に荷重がかかります。右に転倒しやすくなるわけです。そのため、反対側でバランスを取る必要があるのです。
- 左右のバランスは均一か?
- 前後のバランスは均一か?
- 体の揺れ・足の揺れはあるか?【動揺】
- 疲れ具合はどうか?
人によって歩行の癖やバランスのとり方が違うため、実際の動きの中で評価する事が基本になります。通常歩行では安定していても、少しものを持ってバランスを崩せば歩行も難しくなるケースも大です。
在宅に関わる作業療法士は家の環境を確認する必要があります。外の環境が砂利道か舗装されたコンクリートでは歩行の難易度が変わるからです。また、靴を履いて歩くのか?裸足で歩くのかによっても変わります。
病院でのリハビリ
- リハビリ用の滑らない・脱げない靴
- まっすぐで見通しのあるリハビリ室
- 明るく障害物のないバリアフリー
- 担当療法士が見ていてくれる
家の中での歩行
- 裸足・靴下で歩く
- スリッパは逆に引っかかりやすい
- 横幅が狭く見通しの悪い廊下
- 衣装ケースやテーブルの大型家具
- 絨毯やドア付近の段差
リハビリ室でのリハビリは最小限の動きの練習するためにあります。実際の動きを確認しないと歩行の難易度も変わるし、実生活に対応することができません。
作業療法士が自宅の環境をチェックして、どこが困るのか?を理学療法士と一緒に考えて行く必要があります。作業療法士が理学療法士に歩行を任せて何も考えないのはナンセンスです。
自宅環境をきちんと評価して生活しやすくなるように環境を整える。
バリアがあるから諦めるのではなく、いろんな可能性を模索する。
作業療法士は考える力が必要!
まとめ
作業療法士に歩行評価は必要です。
①歩行は移動するためだけに必要ではないから
②運んだり走ったり、環境によって歩行も変化するから
③生活動作は上肢の動きだけではできない、全身運動を意識すべし
以上です。
